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3価クロムとは?基礎知識と6価クロムとの違い、環境への影響を解説

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3価クロムとは、クロム(Cr)の化合物のうち、酸化数が+3のクロムを含むものの総称です。

3価クロムは、環境負荷の少ない金属処理技術として注目されており、日本でも製造業を中心に、採用される動きが加速しています。
一方、6価クロムは、毒性が高いことで知られています。

本記事では、3価クロムの基礎知識や6価クロムとの違い、さらには製造現場での環境配慮や具体的な応用例についてわかりやすく解説します。

クロムメッキの歴史

クロムメッキ技術は1920年代に発展し、6価クロムが自動車部品や装飾品に広く用いられるようになりました。
耐久性と耐食性が高いことから、金属加工業の重要な一翼を担ってきました。

しかし、長年使用されてきた6価クロムは、その有害性が環境と人体への影響を引き起こし、1990年代以降、環境規制が強化される中で代替技術の開発が求められるようになりました。

この流れの中で注目されたのが、環境負荷の少ない3価クロムです。

3価クロムとは

3価クロムとは、クロム(Cr)の化合物のうち、酸化数が+3のクロムを含むものの総称です。
クロム化合物の中でも環境負荷が低く、安全性が高い物質です。

化学的に安定した状態で存在し、6価クロムのような毒性はありません。
このため、近年では多くの製造プロセスで3価クロムへの切り替えが進んでいます。
具体的な用途としては、防錆処理やメッキ加工が挙げられます。

3価クロムメッキは、6価クロムと同等の耐食性を備えており、耐久性や防錆性能の観点からも優れた選択肢となっています。
さらに、3価クロムは環境規制に適合しており、廃水処理や作業環境の改善が可能です。
このため、製造プロセス全体の持続可能性が向上します。

6価クロムとは?

6価クロムとは、クロム(Cr)の化合物のうち、酸化数が+6のクロムを含むものの総称です。

6価クロムは、主に防錆処理やメッキ加工に利用されてきました。
特性として、高い防食性と光沢性が挙げられます。
このため、自動車や建築、電子部品など、多岐にわたる製品で使用されてきました。

しかし、6価クロムには大きな欠点があります。それは、人体や環境に対する毒性です。
6価クロムは、発がん性や環境汚染リスクが指摘されており、多くの国で規制が進んでいます。

たとえば、欧州のRoHS指令(特定有害物質使用制限指令)やREACH規制(化学物質規制)では、6価クロムの使用を厳しく制限しています。
これらの規制に対応するため、製造業者は代替技術として3価クロムを採用する動きを強めています。

3価クロムと6価クロムの違い

特性 6価クロム 3価クロム
毒性 高い(発がん性あり)  
環境影響 有害(規制対象) 低負荷(環境規制に適合)
防錆性能 高い  
用途 防錆・装飾メッキ 防錆・装飾メッキ
コスト 一般的に低い 若干高いが規制対応可能

6価クロムは、歴史的に広く利用されてきた技術ですが、環境問題が顕在化する中でその利用が制限されています。

一方、3価クロムはその代替として、環境への配慮と高い性能を両立する選択肢として注目されています。
3価クロムへの移行は、単に環境規制に対応するだけでなく、企業の社会的責任を果たす手段ともいえます。

3価クロムのメリット

3価クロムには、環境負荷の低減と作業者の安全性を重視する現代の製造業において、多くのメリットがあります。

環境への配慮

3価クロムは毒性が低く、廃水処理の際の負荷が小さいため、環境規制への適合が容易です。
たとえば、欧州のRoHS指令や日本国内の化学物質管理基準に準拠しやすく、企業の環境対応のコスト削減にも寄与します。

作業環境の安全性

作業者への健康リスクが低い点も特徴です。
6価クロムの発がん性リスクに対し、3価クロムはそのようなリスクがほとんどありません。
このため、作業現場の安全基準を満たしつつ、効率的な生産を実現できます。

性能の安定性

耐食性や防錆性能において、3価クロムは6価クロムより耐食性や防錆性能は劣ります。
このため、自動車部品や電子機器のメッキ処理など、高い耐久性が求められる分野では、変色防止や付加的な工程が必要となります。

規制対応が容易

各国の環境規制が強化される中で、3価クロムの採用は企業のCSR(企業の社会的責任)への取り組みとしても評価されます。
また、国際市場での競争力を維持するための重要な選択肢ともなっています。

6価クロムの特徴と課題

6価クロムには、次のような特徴や課題があります。

優れた防錆性と光沢

6価クロムは高い防錆性と美しい光沢を提供します。
このため、自動車や建築、航空機産業などで重用されてきました。
また、加工コストが比較的低い点も長所の一つです。

環境および健康への影響

最大の課題は、その毒性です。
6価クロムは発がん性物質であり、皮膚や呼吸器系に深刻な影響を与えるリスクがあります。
製造プロセス中に発生する廃液は特別な処理が必要であるため、処理コストが高くなります。

環境規制の強化

近年、多くの国で6価クロムの使用を制限または禁止する動きが進んでいます。
このため、既存の生産プロセスに依存している企業にとっては、技術変更や代替材料の導入が避けられない課題となっています。

CSRに対するリスク

消費者の環境意識の高まりに伴い、6価クロムを使用する製品は評価が下がる傾向にあります。
そのため、持続可能性が重視される現代において、6価クロムの使用は企業ブランドに悪影響を与える可能性があります。

RoHS規制(特定有害物質使用制限指令)

RoHS規制(Restriction of Hazardous Substances Directive)とは、EUにおいて、電気電子機器で特定有害物質の使用を制限する規制です。

RoHS規制は、環境保全と人体への影響を最小限に抑えることを目的としています。
規制対象には、鉛、水銀、カドミウム、そして6価クロムなどが含まれており、これらの物質が一定濃度以上含まれる製品の販売が禁止されています。

規制により表面処理材の変更を行った企業

多くの企業がRoHS規制への対応として、表面処理材の変更に着手しており、特に自動車業界や電機業界では、6価クロムの代替として3価クロムを採用する動きが加速しています。

たとえば、中国で電気自動車を手がける自動車メーカー「BYD(比亜迪)」では、2016年より以前に、六価クロムを含まない表面処理剤の使用に切り替えています。

そのほかの規制

RoHS規制以外にも、世界で6価クロムを制限するさまざまな規制が制定されています。

EACH規制(化学物質登録・評価・認可・制限)

EUにおける化学物質管理の枠組みであるREACH規制では、6価クロムを含む高懸念物質(SVHC)の使用が厳しく制限されています。
この規制によって、企業は代替技術の採用や製造プロセスの変更を余儀なくされています。

アメリカの環境保護規制

カリフォルニア州のProposition 65(安全飲料水および有害物質施行法)では、6価クロムがリストアップされており、製品に使用する際は警告表示が必要です。
このため、多くの企業が6価クロムの排除に向けた努力を行っています。

日本の化学物質管理基準

日本国内でも、化学物質の安全性を確保するための基準が強化されています。
特に製造業界では、環境省が定める化学物質排出把握管理促進法(PRTR法)に基づき、6価クロムの使用削減が進められています

まとめ

3価クロムは、環境負荷の低減や規制対応を実現する重要な金属処理技術として、現代の製造業で注目を集めています。
6価クロムに代わる選択肢として、その性能と安全性により、さまざまな業界での採用が進んでいますが、課題も多くあります。

3価クロムの採用は、製造プロセスの持続可能性を高めるだけでなく、企業の競争力を向上させる重要な要素です。
また、6価クロムを使用するが皮膜中の6価クロム残留イオンを除去する「低温黒色クロム処理」など、技術の進化により、さらに多様な製造ニーズに応えることが可能となるでしょう。

技術部や設計部の担当者は、3価クロムの特性や最新動向を正しく理解し、自社の製造プロセスに適切に組み込むことで、環境に配慮した持続可能な製品を提供できます。
本記事が、その一助となれば幸いです。

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